EC市場の急拡大に伴い、物流コストの構造は劇的な変化を遂げました。宅配便の取り扱い個数は過去最高水準を更新し続け、さらには2024年問題の適用によって、かつての安価な配送スキームは完全に過去のものとなっています。ここでは、運賃上昇の背景にある構造的課題と、利益を守るためにEC事業者が今取るべき対策を解説します。
「2024年問題」とは、2024年4月から適用された働き方改革関連法による、トラックドライバーの時間外労働の上限規制(年間960時間)を指します。長年、物流業界はドライバーの長時間労働によって低コスト・高頻度の配送を支えてきました。しかしこの規制により、1人のドライバーが運べる荷物量は物理的に減少し、「輸送力の絶対的な不足」という事態が現実のものとなっています。
時間外労働の上限規制により、ドライバー1人あたりの稼働時間は大幅に短縮されました。その結果、これまで機能していた物流網にさまざまな影響が現れています。
まず顕在化したのが、配送リードタイムの長期化です。1日で届いていた荷物が翌日・翌々日にずれ込むケースが増えていき、特に長距離輸送においてその傾向は顕著になりました。
また、輸送力不足を補うために運送各社は相次いで運賃の値上げと従来サービスの別料金化を実施。再配達の対応や時間指定配送といった、これまで無償で提供されてきたサービスにもコストが発生するようになりました。
EC事業者にとって深刻な問題なのは、2024年問題以後、繁忙期やセール時に配送枠が確保できないリスクが生まれてしまったことです。
1990年代後半のEC黎明期から右肩上がりを続けてきた宅配便の取扱個数は、生活スタイルの変化により爆発的に増加。2020年度には前年から約5億個増の48億個を突破し、その後も高止まりが続いています。
この需要増は一見ポジティブですが、現場では貨物の小口化が極限まで進み、1軒あたりの配送効率が著しく低下。物流現場の負担は限界に達しており、配送網を維持するためのコスト増は、もはや避けて通れない経営課題となっています。
通販利用の日常化に伴い、貨物の小口化・多頻度化が加速。トラックの積載率は以前に比べ低い水準で推移しており、荷台に多くの余剰スペースを残したまま走る非効率な輸送が常態化しています。
燃料費の高騰や人件費の上昇に加え、この輸送効率の悪化が運送業者の利益を圧迫。その結果、運賃への価格転嫁が断続的に行われており、自社発送を中心とするEC事業者にとっては、販管費を押し上げる最大の要因となっています。
運賃高騰という逆風の中、利益を確保するためには個社での運賃交渉には限界があります。そこで重要となるのが、発送代行会社が持つ「大口特約運賃」の活用や、BtoBとBtoCの在庫統合による横持ち運賃の削減です。
事業フェーズや商材特性によって、適切なパートナーは異なります。コスト上昇を単なる出費で終わらせず、物流DXによる効率化や配送品質の向上という「投資」に変えられる業者を選び抜くことが、成長を継続させる近道です。
労働基準法の改正に伴うドライバーの時間外労働上限規制(2024年問題)が適用された今、労働時間の短縮をカバーするためのさらなる運賃値上げや従来サービスの別料金化は、今後も継続的に発生することが予想されます。もはや、ドライバーの長時間労働に依存した低価格運賃は持続不可能であり、物流コストの上昇を前提とした経営判断が求められています。
今後の戦略として、この上昇分を商品価格へ転嫁する、あるいは発送オペレーションを抜本的に効率化してコストを抑えるといった、さまざまな対策が求められるでしょう。
湾岸での荷卸~検品で
コストを削減
など
ECと直接店舗の
在庫を一括管理
など
従量課金制で
固定費を抑制
など